そして、東京へ
腹いっぱい胸いっぱいで公設市場を出る。
カンボジア、ベトナム、香港、北京、フィリピンといった自分が旅したアジアの
国々にある市場と同じニオイのする場所。
人々には笑顔が溢れ、エネルギッシュに接してくる。
まるで、俺らが抱えている問題なんてちっぽけなものであるかのように。
実際、正しいのは彼らなんだろうな。
名残惜しく、ゆいレール牧志駅までの国際通り「奇跡の1マイル」を歩く。
若者達は往来を我が物顔で歩いている。
しかたない、国際通りは君達に委ねよう。
この街で暮らす彼らに嫉妬しつつ、駅に着く。
切符を買う。空港前まで。
来たときとは違う感情で揺られる車中。
東京の四角い空を思い、わずかな憂鬱を感じる。
空港前駅につき、空港へ向かうときも後ろ髪惹かれるように駅を振り返る。
飛行機を待つ一時間ほど長い時間はない。
土産物を見る気力体力はないし、沖縄時間に慣れてしまった身体を
明日からの東京時間に戻すリハビリに充てるのもなんだか癪に障る。
飛行機の座席を確定させ、ふと見るとこっちを見ている。
シーサーが。
まるで、「また来いよ」とでも言っているかのように見えた。
きっとここで、毎日何千何万もの人に「いらっしゃい、いってらっしゃい」と
言い続けているのだろう。
ま、それが気のせいでも何でもいい。
とにかく俺は、この沖縄で最後に出会ったシーサーに、心の中で
「絶対また来るかんな」
と約束をした。
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